リライトレーダーβ

2026-08-18

掲載順位ごとの平均CTRを2021年のデータで使うと、AI Overview時代には取りこぼしを過大評価する

Search Console の「ページ」CSVを見て、「順位は取れているのにクリックされていない記事」を機械的に見つけたいと思いました。

考え方は単純です。掲載順位ごとの平均CTR(期待CTR)と、自分の実CTRを比べる。 差が大きいページは、順位のわりにクリックされていない = タイトルやディスクリプションで 損をしている可能性がある。

取りこぼしクリック数 = 表示回数 × max(0, 期待CTR − 実CTR)

問題は「期待CTR」に何を置くかです。ここで2回つまずいたので、その記録を残します。

つまずき1: よく引用されているCTRデータは日本向けではない

「掲載順位 CTR」で検索すると、1位のCTRは 39.8% という数字が最もよく出てきます。出典は FirstPageSage です。

これをそのまま使うと、ほぼ全てのページが「取りこぼしている」判定になります。個人ブログで1位を取っても、CTRが39.8%に届くことはめったにありません。

理由は、このデータが米国B2Bに偏った標本だからです。BtoBの指名検索に近いクエリが多く含まれていれば、1位のCTRは当然高く出ます。 日本語の一般的な情報検索に当てると数値が2〜3倍にインフレします。

日本語の「最新版」を謳う記事をいくつも読みましたが、中身はほぼ全部この FirstPageSage の再掲でした。

代わりに使ったもの

seoClarity の「2021 CTR Study」の日本市場データを使いました。1位が 13.94% です。7,500億回の表示と300億回のクリックを対象にした調査で、 市場ごとに分けて集計されているため日本のデータが独立して取れます。

「2021年は古い」と当然思います。私もそう思ったので探しました。結果はこうです。

候補使えなかった理由
日本語の「最新CTRデータ」記事群ほぼ全部 FirstPageSage の再掲。上と同じ罠
国内SEO会社の自社実測データ1サイト・852キーワード。手法の開示がなく、1位が1か月で41.0%→32.4%と9pt動く
Advanced Web Ranking毎月更新でGSCの実データだが、US/UK/豪州のみ。日本が無い
seoClarity の新版2021年以降アップデートされていない

つまり、より新しくて信頼できる日本市場のCTRデータは存在しません。規模の面でも、今もこれが唯一です。

つまずき2: 本当の問題は年号ではなかった

2021年のデータを使うことの問題は「古いから」ではありません。AI Overview(AIによる要約)が出る前の期待値と、出た後の実測値を比べてしまうことです。

補正なしで比べると、すべてのページで取りこぼしを過大に見積もります。実CTRが下がっているのは記事が悪いからではなく、検索結果の上にAIの回答が挟まったから かもしれない。それを「タイトルが悪い」と診断するのは誤診です。

補正の係数をどう決めたか

Ahrefs が2025年12月時点のデータを公開しています(AI Overviews reduce clicks)。30万キーワードを対象に、AI Overviewが出ると1位のCTRが58%減るという結果です。

同じ調査の2025年3月時点では34.5%減でした。1年で減少幅がほぼ倍になっています。変化が速い領域なので、数字を固定して放置するのは危険です。

AI Overviewの出現率は43〜60%と報告されています。幅があるので中央付近の0.50を採りました。

補正係数 = 1 − (出現率 × CTR減少率)
        = 1 − (0.50 × 0.58)
        = 0.71

期待CTRを 71% に落として使います。

出典そのままの値と、補正後の値を分けて持つ

混ぜて1つの関数にすると、後から「これは調査値なのか補正値なのか」が分からなくなります。実際にこれをやらかして、説明ページに「調査そのままの値」という列を出しながら 加工後の数字を表示していたことに、後から気づきました。

つまずき3: 生データをそのまま使うと順位と期待CTRが逆転する

掲載順位ごとのCTRは、単調に下がりません。13位で1.07%まで下がったあと、 19位では2.91%に上がります

原因は検索結果の2ページ目です。2ページ目まで進む人は目的が明確なので、 そこにある結果はクリックされやすい。だから10位台後半でCTRが持ち上がります。

これをそのまま期待CTRに使うと、こうなります。

16位のページ: 期待CTR 2.5% / 実CTR 1.0% → 取りこぼし大
10位のページ: 期待CTR 1.5% / 実CTR 1.0% → 取りこぼし小

→ 「順位を下げたほうが、取りこぼし判定が大きくなる」

順位を落とせばスコアが上がる指標は、優先順位づけに使えません。13位以下は下限の1.00%に固定しました。そして「順位が下がるほど期待CTRが上がる区間が無い」ことをテストで固定しています。

こういう「気づかずに直すと壊れる」箇所は、コメントで理由を書いてもいずれ消されます。テストにしておくと、直そうとした人の手元で落ちます。

この方法の限界

使いながら分かった限界を書いておきます。この手法は粗い道具です。

  • 表示回数が少ないページには使えません。実CTRは表示回数が小さいと偶然で大きく振れます。17回表示で0クリックだったとして、 それは「タイトルが悪い」証拠にはなりません。自分のサイトで試したときも、 期間が短いと全ページが除外されて何も出ませんでした
  • AI Overviewの日本固有の出現率は分かりません。43〜60%という数字はほぼ米国ベースです
  • 58%減は1位の数字で、順位別の内訳は確認できていません
  • 掲載順位はクエリ横断の平均値です。そのページがAI Overviewに どれだけ晒されているかは原理的に分かりません
  • 期待CTRを下回る原因は「タイトルが悪い」だけではありません。ブランド想起・季節性・ 検索結果の構成など、CSVから見えない要因があります
  • 逆に、指名検索の多いページは実CTRが期待を大きく超えます(1位で60%を超えることもある)。 だから max(0, ...) を挟んでマイナスを潰しています

それでも、「次に直す記事を勘で決める」よりは順番がつくと思っています。 それが目的の全部です。

この記事の内容をツールにしています

Search Console の「ページ」CSVを貼ると、クリックを取りこぼしている記事を順番に出します。 1記事ぶんの改善案は無料です。ログイン不要で、貼ったCSVはブラウザの外に出ません。

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