この記事のまとめ
「順位のわりにクリックされていない記事」を機械的に見つけるには、改善余地スコア = 表示回数 × max(0, 期待CTR − 実CTR)を出します。期待CTRには日本市場の実測(seoClarity 2021年調査・1位13.94%)を使いますが、これは AI Overview 以前の数字なので、そのまま比べると全ページで取りこぼしを過大に見積もります。そこで Ahrefs の調査(30万キーワード、AI Overviewが出ると1位のCTRが58%減)と出現率0.50から補正係数を作って掛けています。 ⚠️ 当初は 1 −(0.50 × 0.58)= 0.71 を全順位に一律で掛けていましたが、 2026-08-16 に順位別へ変更しました(減少率は1位58.0%・10位19.4%と順位で違うためです)。さらに生データは13位1.07%から19位2.91%へ上がるU字型のため、13位以下は下限の1.00%に固定しました。順位を落とすほど取りこぼしが大きく出る逆転を防ぐためです。
Search Console の「ページ」CSVを見て、「順位は取れているのにクリックされていない記事」を機械的に見つけたいと思いました。
考え方は単純です。掲載順位ごとの平均CTR(期待CTR)と、自分の実CTRを比べる。差が大きいページは、順位のわりにクリックされていない = タイトルやディスクリプションで損をしている可能性がある。
改善余地スコア = 表示回数 × max(0, 期待CTR − 実CTR)
問題は「期待CTR」に何を置くかです。ここで2回つまずいたので、その記録を残します。
この計算をそのまま実装したツールも作っていますが、先に中身の話を書きます。何を補正した数字なのか分からないまま結果だけ見ても、判断の材料になりません。
Search ConsoleのZIPを読み込むと、候補の判定と1記事分の診断カードを無料で確認できます。登録は不要です。ZIPが無い場合は、診断カードの見本を確認できます。
つまずき1: 使う数字を間違えた
最初に手を出したのは、「掲載順位 CTR」で検索すると必ず出てくる 1位39.8% という数字(出典は FirstPageSage)でした。これを期待CTRに置くと、ほぼ全てのページが「取りこぼし」判定になります。検索結果が単純なページに限った複数調査の統合値で、標本の構成が公開されていないためです。日本語の一般的な情報検索に当てると2〜3倍にインフレします。
代わりに seoClarity の2021年調査の日本市場データ(1位13.94%) を採用しました。7,500億回の表示を対象にした調査で、市場ごとに分かれているため日本のぶんが独立して取れます。
39.8%の出所、標本がなぜ偏るのか、代わりの候補を4つ検討して全部落とした経緯は 「1位のCTRは39.8%」を使うと全ページが取りこぼし判定になるに分けて書きました。この記事は、その先の補正の話です。
つまずき2: 本当の問題は年号ではなかった
2021年のデータを使うことの問題は「古いから」ではありません。AI Overview(AIによる要約)が出る前の期待値と、出た後の実測値を比べてしまうことです。
補正なしで比べると、すべてのページで取りこぼしを過大に見積もります。実CTRが下がっているのは記事が悪いからではなく、検索結果の上にAIの回答が挟まったからかもしれない。それを「タイトルが悪い」と診断するのは誤診です。
補正の係数をどう決めたか
Ahrefs が2025年12月時点のデータを公開しています(AI Overviews reduce clicks)。30万キーワードを対象に、AI Overviewが出ると1位のCTRが58%減るという結果です。
同じ調査の2025年3月時点では34.5%減でした。1年で減少幅がほぼ倍になっています。変化が速い領域なので、数字を固定して放置するのは危険です。
AI Overviewの出現率は調査によって大きく割れます。Semrushは10万を超えるキーワードを追って2025年1月6.49%、7月24.61%、11月15.69%。BrightEdgeは9業種のトラッカーで2026年3月に48%。Similarwebは43%。3倍以上ばらつきます。
当ツールは0.50を採っています。高めの側です。理由は精度ではなく、この係数を変えても出す順番がほとんど変わらないからです。400ページの模擬データで0.157から0.50まで振ってみましたが、上位10件の顔ぶれは同じでした。変わるのは判定に載る件数が5%ほど動く程度です。
補正係数 = 1 − (出現率 × CTR減少率)
= 1 − (0.50 × 0.58)
= 0.71⚠️ この0.71は「1位の減少率から作った、当初の一律係数」です。いまは順位ごとに違う係数を掛けています。1位は0.71のままですが、下位ほど減り方が小さいため係数は1に近づき、10位以降は約0.90です。順位別の値は 掲載順位別のCTR平均一覧にまとめました。
一律だったあいだは下位の期待CTRを低く見積もりすぎていたため、下位ページの取りこぼしが小さめに出ていました。
出典そのままの値と、補正後の値を分けて持つ
混ぜて1つの関数にすると、後から「これは調査値なのか補正値なのか」が分からなくなります。実際にこれをやらかして、説明ページに「調査そのままの値」という列を出しながら加工後の数字を表示していたことに、後から気づきました。

つまずき3: 生データをそのまま使うと順位と期待CTRが逆転する
掲載順位ごとのCTRは、単調に下がりません。13位で1.07%まで下がったあと、 19位では2.91%に上がります。
原因は検索結果の2ページ目です。2ページ目まで進む人は目的が明確なので、そこにある結果はクリックされやすい。だから10位台後半でCTRが持ち上がります。
これをそのまま期待CTRに使うと、こうなります。
16位のページ: 期待CTR 2.5% / 実CTR 1.0% → 取りこぼし大 10位のページ: 期待CTR 1.5% / 実CTR 1.0% → 取りこぼし小 → 「順位を下げたほうが、取りこぼし判定が大きくなる」
順位を落とせばスコアが上がる指標は、優先順位づけに使えません。13位以下は下限の1.00%に固定しました。そして「順位が下がるほど期待CTRが上がる区間が無い」ことをテストで固定しています。
こういう「気づかずに直すと壊れる」箇所は、コメントで理由を書いてもいずれ消されます。テストにしておくと、直そうとした人の手元で落ちます。
ここまでの計算をそのまま自動でやるツールにしてあります。Search Console の「ページ」CSVを渡すと、改善余地スコアの大きい順に並びます。詳しくは記事の最後に書きます。
Search ConsoleのZIPを読み込むと、候補の判定と1記事分の診断カードを無料で確認できます。登録は不要です。ZIPが無い場合は、診断カードの見本を確認できます。
この方法の限界
使いながら分かった限界を書いておきます。この手法は粗い道具です。
- 表示回数が少ないページには使えません。実CTRは表示回数が小さいと偶然で大きく振れます。17回表示で0クリックだったとして、それは「タイトルが悪い」証拠にはなりません。自分のサイトで試したときも、期間が短いと全ページが除外されて何も出ませんでした
- 日本固有の出現率は、信頼できる規模のものが見つかっていません。小規模な国内の独自調査はありますが、基準には使えません。上に挙げた数字はいずれも米国中心です
- 58%減は1位の数字です。Ahrefsは順位別の内訳も出しており(2位 −50.8%、8位 −28.8%、10位 −19.4%)、下位ほど影響は小さくなります。 2026-08-16 にこの内訳を反映しました。11位以降は原典に無いので10位の値で据え置いています
- 掲載順位はクエリ横断の平均値です。そのページがAI Overviewにどれだけ晒されているかは原理的に分かりません
- 期待CTRを下回る原因は「タイトルが悪い」だけではありません。ブランド想起・季節性・ 検索結果の構成など、CSVから見えない要因があります
- 逆に、指名検索の多いページは実CTRが期待を大きく超えます(1位で60%を超えることもある)。だから
max(0, ...)を挟んでマイナスを潰しています
それでも、「次に直す記事を勘で決める」よりは順番がつくと思っています。それが目的の全部です。
よくある質問
期待CTRは、出典そのままの値と補正後の値のどちらを見ればいいですか
用途で分かれます。数値の根拠を説明するときに出すのは出典そのままの値(1位13.94%)、実CTRとの比較に使うのは順位別の係数を掛けた補正後の値(1位で約9.90%)です。この2つを1つの関数に混ぜてはいけません。混ぜると、後から「これは調査値なのか補正値なのか」が分からなくなります。
補正係数は、この先も同じ数字で使えますか
使えません。定期的に見直す前提の数字です。根拠にした Ahrefs の調査は、2025年3月時点では34.5%減、2025年12月時点では58%減。9か月で1.7倍に広がっています。出現率のほうはもっと不安定で、Semrushの計測では2025年の1年だけで6.49%→24.61%→15.69%と動きました。どの値を選んでも数か月で古くなります。だからこの係数は、守るべき事実ではなく日付つきの前提として扱っています。
13位以下の1.00%は実測値ですか
いいえ。実測値ではなく、こちらで決めた下限(床)です。出典の実測は13位1.07%まで下がったあと19位2.91%まで上がるU字型で、検索結果の2ページ目まで進む人は目的が明確なぶんクリックしやすいことが原因です。そのまま期待CTRに使うと「順位を落としたほうが取りこぼし判定が大きくなる」ので、床で潰しています。11位以下のCTRはなぜ横ばいなのかに実測値を並べています。
まとめ
- 判定式は改善余地スコア = 表示回数 × max(0, 期待CTR − 実CTR)。難しいのは式ではなく期待CTRに何を置くか
- 期待CTRには日本市場の実測(seoClarity 2021年調査・1位13.94%)を使う。 1位39.8%を置くとほぼ全ページが取りこぼし判定になる
- 2021年データの問題は「古いこと」ではなく、AI Overview以前の期待値と以後の実測値を比べてしまうこと。補正なしだと全ページで取りこぼしを過大に出す
- 補正係数は 1 −(出現率0.50 × その順位のCTR減少率)。当初は1位の0.71を全順位に使っていたが、2026-08-16に順位別へ変更した。減少率は1年でほぼ倍になっており、固定して放置できない
- 生データは順位に対して単調に下がらないので、13位以下は下限1.00%に固定し、逆転が起きないことをテストで固定している
- この手法は粗い道具。表示回数が少ないページには使えず、 AI Overview の出現率(0.50)は米国ベースの推定にとどまる
ここから先は、私が作ったツールの話です。
この記事に書いた計算を自動でやるツールを作りました。 Search Console のエクスポートをZIPのまま落とすだけで、改善余地スコアの大きい順に記事が並びます。解凍もファイル選びも要りません。判定と候補3記事の改善余地スコアの確認、そのうち1記事分の診断カードまでは無料で、残りの診断カードが2,980円(税込)の買い切りです。月額課金や自動更新はありません。ログインも不要です。CSVファイルそのものはブラウザの外に出ません(診断カードを出すときに選んだ1ページのURL・数値・入力したキーワードを、「ページタイトルを取得する」を押したときに判定に出たページのURLを最大10件送ります)。
⚠️ ただし対象になるのは掲載順位4.0〜20.5位・表示回数100回以上のページだけです。上に書いたとおり、表示回数が少ないと実CTRが偶然で大きく振れて判断できないためです。公開日や更新日は「ページ」CSVに入っていないので判定できません。表示回数がまだ少ない段階なら、リライトより記事を増やすほうが先で、このツールは向きません。
Search ConsoleのZIPを読み込むと、候補の判定と1記事分の診断カードを無料で確認できます。登録は不要です。ZIPが無い場合は、診断カードの見本を確認できます。

